スポットライト – 東ロンドン
ダイナミックな力で振動しながら創造性を育む東ロンドン。その勢いは周辺の地域も巻き込み、この数年の間にエリア全体が大幅に再開発されました。すっかりコスモポリタンになった印象がありますが、実は東ロンドンでは今も古くからのロンドンらしいコックニーの魅力もそこここにあふれているため、多様性と活気に拍車がかかり、ますますエネルギーを感じるエリアになっています。ここでは東ロンドンの中でもトレンディーなハックニー、ロンドンで人気が高まりつつある南東ロンドンのペッカム、そしてすっかりおなじみになったショーディッチの3つの地区のレストラン、ホテル、プレイスポットをご紹介します。
どこで食事する?
ハックニー
人気メニューのビザとビール。ハックニー・ウィックにあるビール醸造所クレート・ブリューワリー なら、どちらも大好評です。ピザは手でこねた生地を石窯で焼くスタイル。ハワイアン・ピザはどこにでもありますが、ここではユニークなトッピングがたくさん用意されていて、たとえば中東風に子羊とサツマイモにスティルトンチーズやクルミという組み合わせもあります。そしてクラフト・ビールはその場で醸造されているものです。地ビールを味わうツアーも開催されていますし、斬新なリサイクルで生まれ変わった店の雰囲気を楽しむのもよいでしょう。たとえばバーは昔の鉄道の枕木がおしゃれにリサイクルされているのです。またハックニー運河沿いという絶好のロケーションで、毎週金曜と土曜の夜にはDJが音も流しているので、ヒップな若者をいつも魅了しているレストランです。
独立系のレストランやバーが立ち並ぶエリアにあるグローは、リー川のほとりの元ソーセージ工場を利用したレストラン。環境破壊をしない道徳的な方法で営まれており、地元のアーティスト、DJ、ミュージシャンとも深い関わりが深いという顔も持っています。今夏のグローは、国内で生産された季節の食材を環境にやさしく地元で入手し、これを使って中東風にアレンジする方法を取り入れています。しかしこのレストランに行く目的は食事だけではありません。というのも、お客さんが自由に参加できるステージやアートフェスティバルのような無料イベントがあったり、ジャズ、ブルース、レゲエのライブなど多彩な音楽が奏でられたりするからです。
東ロンドンでも高級エリアであるハックニーの川沿いに位置するフォーマンズ・レストラン。ロンドンで古くからスモークサーモンを作っていることで知られるフォーマンが経営していて、サーモンやシーフードを専門にしています。店内に実際に燻製を行っている場所があるので、おいしい燻製の作り方を見学してみましょう。そして見学が終わったら、温かいウナギの燻製、石平目のポーチのホタテ添え、スコットランド産のスモークサーモン、コーンウォール産クラブのサラダなどのごちそうをお楽しみください。
ペッカム
クリエイティブなカルチャーを感じたいなら、7階建ての駐車場を再利用したペッカム・レベルズに行ってみましょう。そこに新しくオープンしたウェスト・キッチンは、南東ロンドンでカリフォルニアの香りが感じられるレストランです。意識が高いと自称するだけあって、食材は環境を破壊しない方法で生産する農家から仕入れた季節のものを使い、また廃棄する食材も最小限に抑えているとのこと。また意識の高さは、シーバスのセビーチェ、アーユルベーダ風のケジャリーといったメニューにも反映されており、1日中利用できるビオ・ワインのバーがあるのも楽しみのひとつです。
ペッカムの中心に建つ1930年代のアールデコの建物に入っているペッカム・リフレッシュメント・ルームズは、こじんまりしたサイズながら、いつもにぎやかなレストランです。メニューはナスのパルミジャーナやバヴェッテステーキなどヨーロッパ料理が中心。食材は、少ない量を大切にこだわって作る生産者から取り寄せられています。
ペッカム・バザールでは、バルカン半島周辺のメゼやグリル料理を提供しています。現地と同じ食材を使った伝統の調理法にこだわって、グリルにはすべて炭火を使っています。おすすめメニューは、ウサギのグリルのキプロス風ポテト添え、ポークやラムのアダナケバブ、イカのグリルのギリシャ風オルゾパスタ添えなどです。
ショーディッチ
ショーディッチには、やはり人気のシェフが集まっています。今年オープンしたブラットは、キティー・フィッシャーズから移籍したシェフ、トモス・パリーのレストラン。ウェールズとスペイン、バスク地方の料理を大胆にミックスした味を東ロンドンで提供しています。といってもどんな料理なのかを思い浮かべるのは難しいかもしれませんね。具体的には、たとえばハードウィック種の子羊とポークとレイバーブレッドで作ったサラミ、野ウサギのブラッドソーセージとビーンズ添え、まるごとの石平目などです。
2018年のショーディッチの新顔には、ヴィーガンにとっての天国、ヴァーガー・カンパニーも挙げられます。もともと期間限定のポップアップとして開業したのですが、初めて本格的な店舗を出すことになりました。クラウドファンディングで資金集めをしたところ72時間以内に目標額を達成してしまったという大人気のレストランです。ここのバーガーはすべて野菜、ナッツ類、穀類、シード、豆類でできています。おすすめメニューは、ナスとひよこ豆と赤タマネギがたっぷり詰まったタバスコ・オーバーガー。ヴィーガン版のマカロニチーズやミルクシェイクも絶品です。
ショーディッチでは、定番の老舗レストランに行くのもよい方法ですね。革新的な英国料理のレストラン、ライルズは、国内でとれた食材を使うことに熱い情熱を傾けています。またレストランシーンの最前線にあるライルズでは、ゲスト・シリーズという期間を設けて、各国からのシェフが才能を発揮する機会を作っていることも注目すべきでしょう。季節の食材にもこだわっていて、たとえば9月になると狩猟でしとめた肉類を使った料理がメニューに並びます。
どこに泊まる?
ハックニー
元郵便局の建物を改装したアヴォ・ブティックホテルは、おもしろいことに、その郵便局を切り盛りしていた家族が経営しています。部屋ごとに違う装飾がほどこされて洗練された雰囲気でありながら居心地もよく、しかもオーバーグラウンドのドールストン駅から歩いて5分という便利な場所にあります。このエリアには見どころも遊び場もたくさんありますが、夜はゆっくりしたいようなら、ホテルのDVDやゲームのライブラリーを利用するのもいいでしょう。
すてきなホテルに泊まりたいけれど予算に限りがあって、ということもありますよね。そういうときには、新しいハックニー・セントラル駅近くのキップはいかがでしょう? 控えめな予算でスタイリッシュな滞在が楽しめます。見た目は実質本位で飾り気がないかもしれませんが、客室の種類が豊富で、シングル、ツイン、ダブル、スタジオルームに加え、グループルーム、ファミリールーム、なんとペントハウスのスイートルームまであるのです。
ペッカム
ペッカムの中心地にあるビクトリア・インは、ガストロパブも併設しているブティックホテル。建物は1878年の建造です。15室すべてにそれぞれ違うデザインがほどこされ、客室のサイズもシングルから4人家族用までさまざま。地下にあるガストロパブでは、地元産のビールやりんご酒10種類を試したり、季節の英国料理を味わったりして楽しみましょう。
自らを「シンプルでエレガント、多文化を感じられる活気あるエリアに触発されて、アフリカの風を感じられる滞在を控えめな予算で」と表現するペッカム・ルームズ・ホテル。ハイストリートから歩いてほんの5分という利便性の高い独立系のブティックホテルです。地元出身の家族が経営しているので、近くの見どころや、ちょっとした遠出についても気軽に尋ねてみましょう。
カンバーウェルにあるホテルなんて遠くて不便とお思いですか? 実はペッカムから歩いてほんの20分という近さなのです。チャーチストリート・ホテルは、客室にメキシコの手塗りのタイルが貼られているなど、南東ロンドンにいながらアメリカとヒスパニックの気分が味わえるという少し風変わりなホテル。ハバナ・ラウンジやコミュニオン・バーで、ゆったりお酒を飲んでみましょう。
ショーディッチ
ザ・カーテンは、サービス業界のグル、マイケル・アッケンバウムが手がけたホテル。6階建てで、会員制のクラブも入っているこのホテルは、昨年夏にオープンして以来、ずっと話題にのぼり続けています。宿泊したら、ルーフトップにあるプール、映写室、スパをぜひチェックしてみてください。またソウルフードを得意とするニューヨークのミシュランの星付きレストラン、レッド・ルースターも入っています。これはシェフであるマーカス・サミュエルソンにとって初めてのロンドン進出になります。トレンディーなショーディッチにありながら、このホテルの内装はむき出しのレンガの壁、特別注文で作られたアート作品、硬材の床など、クラシックな印象。2018年5月には最高にシックなグリーンルームというバーもオープンして、ザ・カーテンはぜひ行ってみたい場所として、またそこにいることがステイタスになる場所として、大人気になっています。
ロンドンで初めてのノブ・ホテルとして昨年オープンしたノブ・ショーディッチも、このエリアでは比較的新しいホテルです。モダンでエレガントというスタイルは、日本の建築や装飾様式とロンドンのインダストリアルスタイルの両方から発想を得たもの。すばらしく広く開放的なレストランでは、伊勢海老のオーブン焼きの北海道産ホタテ添え、オリジナルのコリアンダーとイクラのアイオリソースなど、日本のごちそうをご堪能ください。
これから数ヶ月の間に、ママ・シェルターのショーディッチ店がオープンする予定なので、ぜひチェックしていてください。このフランス発のホテルは現在のREホテルの場所に開店するのではないかと言われています。噂によると、ショーディッチ店も最新テクノロジーを駆使したものになるようで、客室の設計はデザイナーになるそう。他にも宿泊客が参加できるアクティビティーや交流用のオープンスペースが用意されるなど、このグループの他の店舗と似た形態になると予想されています。
どこで遊ぶ?
ハックニー
今ではストリート・アーティストが盛んに使っている建物のスペースは、この建物は、産業と深い関わりのあったこの地域の歴史を象徴していると言えるでしょう。少し歩いてみるだけで、このエリアではバンクシーやスティック・マンなどの伝説のアーティストの作品を見ることができます。さらにこのエリアはパーティー好きな若者層に人気なので、ナイトライフは伝統的なパブ、期間限定のポップアップのカクテルバー、夜遅くまで営業しているバーやさまざまな種類のナイトクラブなど、本当にバラエティーに富んでいます。東ロンドンでもクールなバーといえば、ジ・エレファンツ・ヘッドが挙げられます。1890年代から営業し始めた店を改装して、再開業。今では古い学校の魅力を残すハックニーでも大人気のバーになりました。
ハックニーはマーケットの宝庫です。1890年代から開かれているブロードウェイ・マーケットで屋台や独立系のショップをのぞいたり、カフェに入ったりしてぶらぶら歩いた後は、道を少し外れて、新しくオープンしたメア・ストリート・マーケットに足を運んでみましょう。さらにカジュアルな雰囲気の中、丸石で舗装された通りを歩くと、クラフトビールの醸造所、カフェ、期間限定のポップアップのファッション・ショップやビニール盤レコードのショップ、マーケットが放送する独自のラジオ番組のにぎやかな声などを楽しむことができます。テレビにも登場するシェフのギジー・アースキンも、もうすぐ自身初のザ・ダイニング・ルームというレストランをオープンする予定です。
カルチャーも楽しみたいですか? メア・ストリート・マーケットの近くには、先進的でアバンギャルドな演劇やコメディーを上演するイーストエンドの劇場、ハックニー・エンパイアがあります。誰もが話題にするものを求めるなら、地下にあるヴィクター・ウィンドの好奇の博物館に行ってみましょう。珍しいものからありふれたものまで、創設者がおもしろいと感じて集めたものばかりが展示されています。たとえば珍しいものでは、自然の中で見つけた変わったものもの、ポップアートのプリント、服役者のスケッチなどがあります。
ペッカム
ペッカムは、ストリート・アーティストの才能を育てる町として知られ始めています。この町を歩くときには、新進の落書きアートにぜひ注目してみてください。またCLFアート・カフェで開かれるさまざまなアートイベント、音楽、映画、コメディー、演劇などにも出かけてみましょう。アート・カフェの入っているブッセー・ビルディングは、多目的倉庫を改造して作られており、ロンドンのおしゃれな人やカルチャー大好きな人たちに人気急上昇の建物です。
インディペンデント系の複合型映画館、ペッカム・プレックスでは新作も広く上映しており、大ヒット作を毎日どの時間帯でも4ポンド99ペンスというお得な値段で観ることができます。他にもインディペンデント系の映画を観たり、アートの展示を楽しんだりできるスペースです。
そのすぐ隣にあるペッカム・レベルズは、立体駐車場に作られた多目的のアートスペース。同時にグルメやナイトライフも楽しめる場所になっています。最上階のフランクス・カフェでは、夏の夜にお酒を飲みながら、目の前に広がるロンドンの街の地平線のパノラマを楽しむことができます。あるいはペッカム・ライ駅の高架下にあるブリック醸造所でクラフト・ビールを楽しむ夕べというのもよいでしょう。醸造所にある注ぎ口から直接ビールをついで飲むことができます。
タイムスリップをしてみませんか? ペッカムにあるフォー・クォーターズはロンドンに初めてできたアーケードのバーです。1980年代に大流行したゲーム機が15台置かれているので、ゲームの腕が鈍っていないかどうか確かめてみましょう。それから地下のカクテルバー兼クラブのザ・コンフェッション・ボックスに行って、踊り明かしましょう。
ショーディッチ
長い間、クリエイティブな人々を育み、その拠点となってきたショーディッチ。モダンカルチャーの分野では今も依然として評価が高いエリアで、価値のあるギャラリーが数多く集まっています。たとえばケイト・マクギャリー・ギャラリーではビデオアーやパフォーマンス系のアートが楽しめますしジェラス・ギャラリーではデイヴィッド・シュリグリーやラッセル・マーシャルなど著名なアーティストや写真家の作品を購入することができます。
いつもと違うジャンルの作品を観てみたい演劇好きの方には、ニュー・ショーディッチ・シアターがおすすめです。ここでは演劇、ライブ音楽、アート、映画、インスタレーションなどのジャンルにこだわらず、クリエイティブな背景をもつアーティストを広く起用しています。独立系のミュージックショップであるラフ・トレード・イーストでも、すばらしいパフォーマンスや上質の音楽を鑑賞することができます(レコード盤好きにもたまらないセレクションです)。
このエリアには、新しいバーやクラブが次々に生まれています。たとえばパリ風なワインバー&ビストロのリロイ。ワインリストには100種類のワインがずらりと並び、特製のベルモットも味わえます。5月末にキングスランド・ロードにオープンしたジ・オフィスでは、クラシックで風変わりなカクテルが人気です。2017年の終わりにオープンしたスモーキング・ゴートでは、少し変わったお酒を試してみましょう。ポルトガル産イチヂクのファイヤーウォーターと梅酒のウモシなどはいかがですか?
ショーディッチで夜遊びをした次の日。ぼんやりした頭をすっきりさせるには、大人気のコロンビア・ロード・フラワー・マーケットをぶらぶらしてみるのが何より楽しいのではないでしょうか。ショーディッチからは歩いてほんの10分ほどです。美しい花を見ると気持ちが和みますし、ヴィンテージクローズの店や小さなアートギャラリー、アンティークショップなど、独立系のショップをのぞいて歩くのも楽しい時間です。かわいらしいカフェも多いので、おいしいコーヒーを味わうのもいいですね。ショーディッチのボックスパークは、輸送コンテナを利用して期間限定で作られたショッピングモール。独立系のショップや世界的に著名なブランド、レストランなどが軒を連ねていて、ショッピングに最適です。