スコットランドが誇るモルトウィスキーの島・アイラ島完全攻略法

by 長谷川友美/YUMI HASEGAWA
Monday 10 May 2021

  スコットランドには、実に750以上の島々があります。日本でも馴染みがあるのは、アイラ島、ジュラ島、スカイ島、マル島といった、シングルモルトウィスキーの生産地であり、観光資源も豊かなことから人気のインナー・ヘブリディーズ諸島です。スコットランド本土西岸にほど近く、定期便の飛行機やフェリーでのアクセスが可能なことから、訪問者も増加の傾向にあります。今回はその中でも、「ヘブリディーズ諸島の女王」と呼ばれ、ウィスキーファンの聖地とされるアイラ島についてご紹介しましょう。

 アイラ島は地質学的にもとても興味深く、異なる地殻が衝突してできた人口3500人程度の島です。そのため、エリアによって固い地層と湿地帯という両極端な性質を持っています。野鳥の営巣地としても有名で、自然保護地区もあり、まさに「ヘブリディーズ諸島の女王」の名に相応しい、多彩な自然を見せてくれる美しい島です。メキシコ湾流が流れ込んでいるため、北欧に近い北国の島でありながら、一年を通じて比較的気候が穏やかなのも人気の理由でしょう。

 アイラ島へは、グラスゴーから飛行機かフェリーで向かいます。グラスゴー国際空港から、スコットランドの航空会社であるローガンエアー便で約40分。週に20便程度が運航しています。フェリーの場合は、グラスゴー中心部のブキャナン・バス・ステーションから長距離バスに乗り、ケナクレイグ(Kennacraig)まで3時間半。そこからフェリーで約2時間と長旅ではありますが、バスでは途中のハイランドの山々の絶景や、快適な船旅も楽しめるので、時間に余裕のある人にはぜひおすすめしたいコースです。

 

 アイラ島は大きく4つのエリアに分けると、位置関係が把握しやすいと思います。まず、空港に近く、観光案内所やスーパーマーケットもある島の中心部、Bowmore(ボウモア)。いわずと知れた、ボウモア蒸留所のある町です。現在アイラ島には9つの蒸留所がありますが、日本でいちばん人気が高く、有名なのがこのボウモア蒸留所でしょう。アイラ島のシングルモルトウィスキーは、泥炭(ピート)を燻して香り付けした独特のスモーキーで力強い風味が最大の特徴ですが、ボウモアは比較的優しい味わいで幅広い層に愛されています。ボウモア周辺にはホテルも多く、どこのホテルのレストランでも地元で水揚げされたロブスターやラングスティン(手長エビ)、牡蠣、ホタテ、ムール貝などが贅沢に味わえます。ご飯が美味しいことも、アイラ島の大きな魅力です。

ボウモア・ホテル: https://bowmorehotel.co.uk/
ロックサイド・ホテル: https://lochsidehotel.co.uk/
ハーバー・イン: https://www.bowmore.com/harbour-inn

島の中心部、Bowmore(ボウモア)

海と円形教会を結ぶ、なだらかな坂道がボウモアの目抜き通り

1779年創業のボウモア蒸留所

1779年創業のボウモア蒸留所は、アイラ島最古のウィスキー蒸留所
 

スピリットセーフと呼ばれる、鍵付きの箱

アルコール度の高い溜液を検査するためのスピリットセーフと呼ばれる、鍵付きの箱にはゲール語で「命の水」を意味する「Uisge Beatha(ウースカ・ベーハ)」の文字が刻まれています

700種類ものモルトウィスキーが楽しめるボウモア・ホテルのバー

700種類ものモルトウィスキーが楽しめるボウモア・ホテルのバーは、地元の人たちの憩いの場でもあり、フレンドリーな雰囲気です

ボウモア・ホテルのレストラン

ボウモア・ホテルのレストランでは、スコットランドやアイラ島の伝統料理が堪能できます。シェフのリンダ・マックリーランさんのお料理は、どれも家庭的で優しい味わい

ロックサイド・ホテル

ロックサイド・ホテルでは、ボウモア港やインダール湖の景色を眺めながら、ラングスティンやフィッシュ&チップスなどのシーフード料理が楽しめます。

 

 ボウモアから少し内陸部に入ったBridgend(ブリッジエンド)は、ラガン川沿いの緑豊かな森林地帯です。ピートが流れ出した川の色は深いウィスキー色ですが、水質は柔らかく、最高のウィスキーを作るのに最適。木霊に出会えそうな幻想的な風景の中で、森林浴を楽しんでみては。

ウィスキー色に輝くラガン川と、マイナスイオンに癒やされるブリッジエンドの林

ウィスキー色に輝くラガン川と、マイナスイオンに癒やされるブリッジエンドの林

ブリッジエンド・ホテルで味わえるラングスティンの尾の身と、エビの出汁がふんだんに効いたビスク

ブリッジエンド・ホテルで味わえるラングスティンの尾の身と、エビの出汁がふんだんに効いたビスク

 

 スコットランド本土からのフェリーが発着するPort Ellen(ポート・エリン)は、島の南部に位置します。この周辺には、スモーキーな味わいで日本でも人気の高いLaphroaig(ラフロイグ)蒸留所Lagavulin(ラガブーリン)蒸留所Ardbeg(アードベグ)蒸留所があり、ウィスキー探訪の重要な拠点となっています。各蒸留所では見学ツアーや試飲なども行っており、併設のレストランでは美味しいスコットランド料理が味わえるので、ランチにぜひ利用してみてください。

 また、英国王立鳥類保護協会(RSPB)が管理する自然保護地区のThe Oa(ジ・オウ)半島や、8世紀に建てられたケルト十字、Kildalton Cross(キルダルトン・クロス)のある教会など、自然と歴史を肌で感じることができます。ジ・オウ半島周辺の海は、イルカやミンククジラ・ウォッチングのベストスポットとしても知られています。

北アイルランドの対岸にあるラフロイグ蒸留所

北アイルランドの対岸にあるラフロイグ蒸留所

 

ラガヴーリン蒸留所からは、ラガヴーリン湾を挟んでダニーヴェイグ城跡が望めます

ラガヴーリン蒸留所からは、ラガヴーリン湾を挟んでダニーヴェイグ城跡が望めます

巨大なスティルポットが目印のアードベグ蒸留所

巨大なスティルポットが目印のアードベグ蒸留所。ここのカフェで供されるカレン・スキンク(燻製タラとじゃがいものクリームスープ)は絶品です

ジ・オウの断崖から望む景観は、筆舌に尽くしがたい美しさ

ジ・オウの断崖から望む景観は、筆舌に尽くしがたい美しさ。貴重な鳥類の他に、絶滅危惧種のハイランド・カウの姿も

キルダルトン・クロス

キルダルトン・クロスには、聖書に登場する聖母子像やカインとアベル、天使像、ライオンを仕留める聖ダビデなどが彫られています

ポート・エリンにあるThe Islay Hotel

ポート・エリンにあるThe Islay Hotel(アイラ・ホテル)のレストランは、ブルックラディ蒸留所産のジンに漬け込んだオリーブなど、モダンにアレンジした伝統料理が自慢です

 

 インダール湖を挟んで西側は、Port Charlotte(ポート・シャーロット)。ボウモアに続き住宅の多い地区ですが、美しい入り江や砂浜、湖、そして英国王立鳥類保護教会(RSPB)が管理する自然保護地区のLoch Gruinart(ロッホ・グリニャート)があり、アイラ島が誇る自然の魅力を凝縮したような見どころの多いエリアです。モルトウィスキーはもちろんのこと、アイラ島で手摘みされた、22の植物を使った香り高いジンのThe Botanist(ボタニスト)も評判を呼んでいるBruichladdich(ブルックラディ)蒸留所や、ゲール語で「青い湖」を意味するLoch Gorm(ロッホ・ゴーム)を望むKilchoman(キルホーマン)蒸留所など、日本では入手しづらい名品を丁寧に作っている醸造所は外せません。

また、北海に面した西岸のSaligo Bay(サリゴ湾)や、「ゴールデンビーチ」の異名を持つMachir Bay(マッキャー湾)など、砂浜と岩場の情景が美しい海辺の景色もこのエリアならでは。西端のPortnahaven(ポートナヘイヴン)岬は小さな漁港ですが、この周辺では日光浴をするアザラシを見ることができます。

 料理が絶品のポート・シャーロット・ホテルでは、定期的に伝統音楽の演奏なども行っています。また、ロッヒンダール・ホテルのレストランもクオリティが高いので、ぜひ足を運んでみてください。

ロッホ・グリニャート保護地区

 

ロッホ・グリニャート保護地区は、猛禽類を始めとする野鳥や渡り鳥観察の重要なスポット。夏には一面にヒースが咲き乱れ、グリニャート湖畔では牡蠣の養殖を見ることもできます

ブルックラディ蒸留所

ブルックラディ蒸留所でThe Botanistジンを蒸留している、クラシックな作りのスティルポット。ピートが効いているのにすっきりとした都会的な味わいのシングルモルトウィスキー。Port Charlotteもおすすめです

紺碧の空を写し出す、ロッホ・ゴーム

紺碧の空を写し出す、ロッホ・ゴーム

 

小高い丘に位置するキルホーマン蒸留所

海沿いではなく、小高い丘に位置するキルホーマン蒸留所。カフェではカレン・スキンクやハギスサンドイッチといった、伝統的なスコットランド料理が味わえます

静謐な雰囲気のサリゴ湾

静謐な雰囲気のサリゴ湾。アイラ島の海岸や浜辺は、どこも全く異なる顔を持っています

 

マッキャー湾の黄金に輝く砂浜

ゴールデン・ビーチの名に相応しい、マッキャー湾の黄金に輝く砂浜

小さな港町のポートナヘイヴン

​​​​​​​小さな港町のポートナヘイヴン。晴れた日には、アザラシの姿を見ることができます

ポート・シャーロット・ホテル

ポート・シャーロット・ホテルのディナーは絶品。ラングスティンや鹿肉のシチューなど、地元産の食材がふんだんに使われています

ポート・シャーロット・ホテル

ロッヒンダール・ホテル名物のカニ・ホタテ・ラングスティンの盛り合わせ。新鮮な魚貝をお腹いっぱい食べられるのも、アイラ島ならではの贅沢です
 

 最後のエリアは、北東部のPort Askaig(ポート・アスケイグ)です。アスケイグ港は、近海産の海産物が水揚げされる漁港であり、本土からのフェリーの発着所でもあります。また、対岸は1kmと離れていないジュラ島で、ここから船で渡れます。ジュラ島にも蒸留所があり、美味しいジンなども製造していますが、アイラ島とは違って住民も数少なく、鹿の楽園のような島です。

 ポート・アスケイグには、ゲール語で「川の水」の意味を持つブナハーブン蒸留所(Bunnahabhain)や、「アイラ海峡」を意味するCaol Ila(カリラ)醸造所がありますが、やはりどちらも日本では通好みのウィスキーブランド。他のアイラウィスキーとは一線を画す、ピート香が控えめの柔らかな味わいが特徴です。 また、2019年に営業を開始したアイラ島9番目の蒸留所、アドナッホー(Ardnahoe)蒸留所もあります。最新の設備を備えたモダンな蒸留所もぜひ訪れてみたいスポットです。

 葦が生い茂るフィンラガン湖(Loch Finlaggan)のほとりにあるフィンラガン城は、スコットランド王国の騎士であり、ロード・オブ・アイル(諸島の主)の称号を持つ、ドナルド家の居城だった中世の城跡です。静かに佇む瓦礫の城に触れ、歴史に思いを馳せるのも一興です。

 最後に、ポート・アスケイグに来たら、ぜひポート・アスケイグ・ホテルでシーフードの盛り合わせを! アスケイグの港に水揚げされたばかりの新鮮なロブスターやカニ、ラングスティンを贅沢に盛り合わせたシーフードプラッターは、驚くほどリーズナブル。島産のウィスキーを合わせれば、アイラの美しい自然と美味しい水が優しく胃に染み込んでいきます。

ジュラ島と、水揚げされたばかりのカニ

北東の漁港、ポート・アスケイグから望むフタコブラクダのようなジュラ島と、水揚げされたばかりのカニ
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ブナハーブン蒸留所

ジュラ島との海峡に面した3つの蒸留所のひとつ、ブナハーブン蒸留所。アイラ島では珍しく、ピート香のないすっきりとした味わいのモルトウィスキーを作っています

アスケイグ港からほど近い、カリラ蒸留所

アスケイグ港からほど近い、カリラ蒸留所は無機質なコンクリートの外観とは裏腹に、スティルポット越しに見えるジュラ島の景色が高い人気を誇っています

中世の城跡・フィンラガン城

葦が生い茂るフィンラガン湖畔にひっそりと佇む、中世の城跡・フィンラガン城

ポート・アスケイグ・ホテルが誇るシーフードの盛り合わせ

 

ポート・アスケイグ・ホテルが誇るシーフードの盛り合わせ。水揚げされたばかりのロブスターやカニ、ラングスティン、ホタテ、ムール貝などが贅沢に盛りつけられています(要予約)

 

 駆け足での紹介になってしまいましたが、ほかにも、アイラのウィスキー作りと、燃料として人々の生活にに欠かせないピートを採掘する畑など、見どころがたくさん。そしてこの島の魅力は何と言っても優しくて、親切でシャイだけれど人懐こい島民の方々です。ぜひ、レンタカーを手配して、じっくり時間を取ってこの美しい島と島民の方々とのふれあいを満喫してください。

Author

長谷川友美/YUMI HASEGAWA

ライター/コーディネーター。ロンドン在住。 カルチャー、ライフスタイル、ファッション、音楽、食、旅、アートなど、 イギリスの最旬情報を幅広く執筆・翻訳・通訳する英国オタク。

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