環境先進国でサステナブル・ロンドンを楽しみ尽くす!

by 長谷川友美/YUMI HASEGAWA
Sunday 09 May 2021

 世界屈指の環境先進国を標榜するイギリスでは、積極的に環境問題に取り組んでいます。2012年に開催されたロンドンオリンピックは、史上初のサステナビリティに配慮した五輪として、ロールモデルの役割を果たしました。2008年には、当時のロンドン市長だったケン・リビングストン氏が市内に12の自転車専用レーンを設置し、レンタサイクルのシステムを整えたことでサイクリストが急増し、現在では倍の24もの自転車専用レーンがあります。上級者向けの高速レーンや初心者用のクワイエットレーンなどもあり、クレジットカードがあればすぐに借りられるレンタサイクルなどを活用して、観光を楽しむこともできます。
 

 同時に、環境汚染に配慮し、現在の市長であるサディク・カーン氏の指導のもと、ロンドン中心部のほとんどが低排気ゾーンに指定され、ディーゼルの自家用車は1日12ポンド50ペンス、5トン以上のトラックやバスは1日100ポンドの超低排気税を払うことが義務づけられました。また、2019年には世界初の「国立公園都市」を宣言。現在すでに人口ひとりあたりの公園面積は東京の約10倍と、大きな公園や緑が多いことでも知られるロンドンですが、2050年までに市内の50パーセントを緑地にするという目標を掲げています。

 

 東京とほぼ同じサイズの大都市ではあるものの、自然に触れられるのもロンドン観光の魅力のひとつ。さらに近年では、持続可能な未来への取り組みも、ロンドンを満喫するキーワードのひとつとなりました。今回は、そんな「サステナブル・ロンドン」の楽しみ方をご紹介しましょう。

 

 33の地方行政区画に分かれている大ロンドン市の中で、特に環境問題に熱心な取り組みをしている区のひとつが、北東部のハックニー区です。かつてはヨーロッパ屈指の貧民街でしたが、オリンピックを機に再開発が進み、安全で暮らしやすい地域になりました。面白いことに挑戦している若いクリエーターやアーティスト、デザイナーが暮らすホクストン、ダルストン、ハガストンと呼ばれるエリアは、ショッピングやナイトライフの中心地。現在ではすっかり流行の震源地として感度の高い旅行者を魅了しています。

 

 2019年末に、クイーン・エリザベス・オリンピックパークのそばにオープンしたレストラン「Silo(サイロ)」は、廃棄物削減を目的とした「ゼロウェイスト」をコンセプトに掲げています。地元の生産農家と直接契約し、食品ロスだけではなく、梱包材やパッケージをすべて再利用可能なものにすることで、一切のゴミを出さない取り組みに挑戦しています。店内に生ゴミ処理機を設置し、エコ堆肥であるコンポストを生成し、これを農家に使用してもらうことで食品の生産・消費・再生産のループを実現しています。素材となる野菜や穀物・畜肉も自然の肥料や飼料で育てられた新鮮なものを使用し、地球環境にも人間の身体にも優しい料理を提供しています。

 創立者であるシェフのダグラス・マクマスター氏は、Siloをイギリス南東部のビーチリゾートとして人気の高い、ブライトンの街でスタート。1年半ほど前にロンドンに拠点を移しました(ちなみにブライトンはヒッピー文化が根付いた、エコとベジタリアンの街としても知られています)。もちろん、Siloはベジタリアンメニューも充実しています。

 Siloが居を構えるハックニー・ウィック地区は、リージェント運河沿いのアップ&カミングな注目のエリア。個性的なグラフィティに彩られたカフェやバーが続々オープンし、賑わいをみせています。2018年には、新進気鋭の英国人シェフ、トム・ブラウン氏がモダンシーフードの専門店をオープンしたことでも話題になりました。こちらも、国内産の素材を使い、環境に配慮したサステナブルな絶品料理を提供しているので要チェックです。
 

バルクマーケットの量り売りの穀物・パスタ・ナッツ類と、ビューティーバー 家庭洗剤など

バルクマーケットの量り売りの穀物・パスタ・ナッツ類
 

 日々の生活の中で実践できる「ゼロウェイスト」を提案しているショップもあります。毎週土曜日の路上マーケットが人気のブロードウェイ・マーケット地区にある「Bulk(バルク)」は、生鮮食品やパスタ・穀物、ナッツ、シリアル、オイルやハーブなどを、消費者が容器を持参し、量り売りで販売するスタイル。コーヒーや紅茶、ナチュラル素材の掃除グッズなどお土産にも適した商品も幅広く扱っているので、覗いてみるとロンドンっ子の意識の高さを体感できるかもしれません。自然由来の素材を使った化粧品のレシピや掃除術なども教えてもらえますよ。

バルクマーケットの量り売りの穀物・パスタ・ナッツ類と、ビューティーバー 家庭洗剤

バルクマーケットの量り売りのビューティーバー

バルクマーケットの量り売りの穀物・パスタ・ナッツ類と、ビューティーバー 家庭洗剤

バルクマーケットでは家庭洗剤なども環境に配慮したものを量り売りで買うことができます

 

 ブロードウェイ・マーケットは、地域コミュニティに根ざした個性的なお店が点在していることでも話題のエリアです。「69b Boutique(69bブティック)」は、英国内外の環境保全や社会貢献に配慮した服作りをしている、エシカルなブランドやデザイナーの商品のみに特化したサステナブル&フェアトレード専門のセレクトショップです。地球環境を守るための素材を使っていることはもちろん、その製造に関わる人々の労働環境や社会貢献、世界の地域の特産や働き方を守るための活動にも取り組んでいるブランドは、ここ数年で急激に増えています。ファストファッションの世界的な大手ブランドでさえ、不要になった衣服やアクセサリーを引き取り、再利用する活動を始めています。衣類は使い捨ての時代から、一生ものの時代へ。このブティックでは、丁寧に作られたデザイン性と機能性とを兼ね備えた、自分だけの一点ものの洋服やバッグ、靴、アクセサリーを見つけることができます。

 

69b Boutique(69bブティック)

69bブティックオーナーのアネリ・マリノヴィッチさん

 

69b Boutique(69bブティック)

ショップには、一点ものの個性的な服や小物が揃っています
 

 ロンドンには、無数のチャリティー・ショップと呼ばれるリサイクルショップがあります。チャリティー・ショップ巡りは、英国旅の上級者になる最良の近道。地元の人が不要になった衣類や書籍、レコード、家庭用品、雑貨などを持ち込み、それを販売した収益金を非営利活動に活かす仕組みです。お店によって、第三国への支援やガン患者への支援、赤十字、エイズ撲滅運動の資金など、さまざまなチャリティー団体への寄付に充てています。ロンドンっ子は、チャリティー・ショップの使い方が本当に上手。掘り出し物を安く見つけることのできるチャリティー・ショップを利用してみるのも面白いかもしれません。

 

ここ数年、すっかりロンドンのホットスポットとなったダルストン地区には、環境に優しい原材料のみを使用した自然派のネイルサロンも登場しました。ネイルといえば、化学薬品由来という常識を覆し、ビーガンでも安心して使える、動物実験や環境汚染物質を一切排除したネイルやスキンケア用品を取り扱っています。エシカルで、地球と人間に優しい製品を取り入れることで、人間が持つ本来の豊かな感情を取り戻すことがコンセプト。リラックスした時間を楽しみながら、持続可能な未来に貢献するネイル&トリートメントを体験してみては。

 

Dalston Eastern Curve Garden(ダルストン・イースタン・カーブ・ガーデン)

 

 ダルストンには、他にもサステナブルでエコな楽しみ方がいっぱい。「Dalston Eastern Curve Garden(ダルストン・イースタン・カーブ・ガーデン)」は、地域のコミュニティが運営する公共ガーデンで、入場無料で誰でも訪れることができます。ロンドン市内でもっとも人口密度が高いハックニー区に自然と触れあえる場所を作りたい、という地元民の願いから設立されました。四季折々の花や草木から、近隣の小学校の子どもたちが植えた植物や野菜まで、自然を満喫しながら、お茶やお酒をゆっくりと楽しむことができます。ピザ釜で焼く、本格的なホームメイドピザも自慢です。

Dalston Eastern Curve Garden(ダルストン・イースタン・カーブ・ガーデン)

 

Dalston Eastern Curve Garden(ダルストン・イースタン・カーブ・ガーデン)

 
 最後に、とびきりエコな最新のナイトライフ事情を。ダルストンにオープンした「Draughts(ドラウツ)」は、ボードゲーム専門のカフェバーです。ヴィクトリア時代から続く老舗のパイ&マッシュ専門店の外観や内装をそのまま利用した、レトロな雰囲気だけでもロンドン感を満喫できます。実に1000種類以上のボードゲームが揃っており、種類豊富なお酒やソフトドリンク、おつまみ、食事を楽しみながら遊べます。ビール片手に地元の人たちとの健全なボードゲーム対戦に興じれば、旅の良い思い出になること間違いなしです。

Author

長谷川友美/YUMI HASEGAWA

ライター/コーディネーター。ロンドン在住。 カルチャー、ライフスタイル、ファッション、音楽、食、旅、アートなど、 イギリスの最旬情報を幅広く執筆・翻訳・通訳する英国オタク。

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