スコットランド第2の都市・グラスゴーの極私的満喫術

by 長谷川友美/YUMI HASEGAWA
Monday 10 May 2021

 人生の半分以上を過ごしたロンドンは、筆者にとって第二の故郷です。それでも、もしロンドン以外の場所に住むとしたら? と訊かれたら、迷わずスコットランドのグラスゴーを選ぶでしょう。スコットランドは、イングランドとの国境に近いローランド地方から、美しい山々に囲まれたハイランド地方、厳しい自然と独自の風土が織りなすヘブリディーズの島々、世界遺産に登録されている首都エディンバラなど、それぞれに素晴らしい文化と伝統を誇っています。その中でも工業都市グラスゴーは、ロンドンに勝るとも劣らない、最新のカルチャーやアート&デザイン、ダイバースな食文化が息づくエキサイティングな街。それでいて人の温もりや優しさを感じさせてくれ、一度訪れたらすっかり虜になってしまう魅力に溢れています。

 今回は、ガイドブックには載っていない、極私的なグラスゴーの楽しみ方についてお話しします。

スコットランド第2の都市・グラスゴーの極私的満喫術

重厚なグラスゴーの街並み

スコットランド第2の都市・グラスゴーの極私的満喫術

 グラスゴーで注目のエリアは、おおまかに分けて4つ。街の中心部、シティ・センターとマーチャント・シティ(Marchant City)には観光的な見どころもたくさんあり、ショッピングにも最適です。サブウェイと呼ばれる、環状線の地下鉄駅Hillhead周辺、グラスゴー大学のあるウェストエンド(Westend)は、若者が集まる学生街らしい活気に満ちていて、お洒落なバーやカフェも豊富。ちょうどマーチャント・シティとウェストエンドの間に位置するフィニエストン(Finnieston)は、最近人気のお洒落エリアで、主にアーガイル・ストリートに沿ってスタイリッシュなバーやモダンなレストラン、ナイトスポットが軒を連ねています。そして最新の注目エリアは、クライド川南岸のサウスサイド(Southside)。ビーガンやベジタリアン系のカフェ&レストランが急増し、緑も多いこの地区に移住する人も多いようです。

 

 グラスゴーの面白いところは、アート愛好家から建築&インテリアデザイン好き、音楽マニア、フットボールファン、食べ歩きが趣味の人までありとあらゆる嗜好を満たしてくれるところです。例えば、世界的に人気の高い建築家、レニー・マッキントッシュがデザインした建造物を巡りながら、アーツ&クラフト運動の遺産に触れるのも楽しい体験です。グラスゴー大学内にあるハンタリアン博物館(Hunterian Museum)のマッキントッシュ・ハウスなどは王道ですが、サウスサイドにある「芸術愛好家のための家(House for an Art Lover)」もおすすめです。1901年に、マッキントッシュがドイツの建築デザインコンペティションに応募した設計図を元に建てられた複合施設で、マッキントッシュの世界観を堪能できるカフェも併設されています。

スコットランド第2の都市・グラスゴーの極私的満喫術

グラスゴー大学内のハンタリアン博物館に併設された、マッキントッシュ・ハウス

レニー・マッキントッシュ夫妻が暮らした家を移転し、内装も当時のままに公開

ハウス・フォー・アン・アート・ラバー

マッキントッシュの設計図を元に再現されたハウス・フォー・アン・アート・ラバー
 

ハウス・フォー・アン・アート・ラバー

 

ハウス・フォー・アン・アート・ラバー

 

 サウスサイドには、フットボールファンを満足させるスポットも充実しています。地元でセルティックFCと人気を二分するスコティッシュ・プレミアシップの強豪、レンジャーズFCの本拠地であるアイブロックス・スタジアムはもちろん、地下鉄Ibrox駅前にあるサポーターズパブもアットホームな雰囲気でおすすめです。

 サウスサイドには、スコットランドの国立競技場である、ハムデン・パーク(Hampden Park)もあります。クイーンズ・パークFCの本拠地であると同時に、サッカースコットランド代表のホームスタジアムにもなっています。国立フットボール博物館も併設されており、スコットランドサッカーの歴史に触れることができます。スタジアムツアーも催行されているので、フットボールファンはぜひ足を運んでみてください。

レンジャーズFCの本拠地、アイブロックス・スタジアム
レンジャーズFCの本拠地、アイブロックス・スタジアム

レンジャーズFCの本拠地、アイブロックス・スタジアム。熱狂的なサポーターが多いクラブです

レンジャーズFCの本拠地、アイブロックス・スタジアム。熱狂的なサポーターが多いクラブです

地下鉄Ibrox駅の目の前にあるレンジャーズFCのサポーターズパブ、The Louden Tavern

 

 他にもクイーンズ・パーク(Queen’s Park)やポロック・カントリー・パーク(Pollok Country Park)など豊かな自然に囲まれ、歴史的な建造物が多いサウスサイドには見どころもたくさんありますが、最近ではベジタリアンやビーガン向けのお洒落なカフェも急増中。週末には、ヘルシーなブランチを頂いてから、のんびりとクライド川南岸の散策に出掛けてみるのもいいかもしれません。

 クライド川の北側、ケルヴィングローヴ美術館・博物館(Kelvingrove Art Gallery and Museum)にほど近い西部のフィニエストン地区は、今グラスゴーでいちばん注目を浴びている話題のエリア。川沿いには、英連邦加盟国によるスポーツの祭典、コモンウェルス・ゲームズの開催に合わせて2014年に建設された多目的アリーナのSSEハイドロや、コンサートや演劇がさかんに行われている多目的ホールのSECアルマジロ、ザハ・ハディドがデザインした交通博物館のリバーサイド・ミュージアムなど、近未来的なランドマークが建ち並んでいます。

ザハ・ハディドの設計による、リバーサイド・ミュージアム

ザハ・ハディドの設計による、リバーサイド・ミュージアム。交通や乗り物に関する展示が人気の博物館です

SSEハイドロとSECアルマジロの近未来的な外観は、グラスゴーの新しいランドマークに

SSEハイドロとSECアルマジロの近未来的な外観は、グラスゴーの新しいランドマークに

SSEハイドロとSECアルマジロの近未来的な外観は、グラスゴーの新しいランドマークに

 建築探訪を楽しんだあとは、ナイトライフの中心地、アーガイル・ストリート(Argyle Street)周辺へ。グラスゴーで最先端の料理を味わいたいなら、フィニエストンは外せないエリアです。伝統的なスコティッシュ料理に、アジアや中近東のエキゾチックなテイストをミックスした、フュージョン料理が地元の若者たちにも大人気。魚介類が豊富に集まる地の利を活かした、シーフード料理が多いのも特長です。

 中でもおすすめなのが、地中海料理のシェアプレートが楽しめるAlchemilla(アルケミラ)。素材の持ち味を活かしたシンプルながら計算され尽くした一品料理の数々は、日本人の口にとても合います。英国旅行中はなにかと野菜不足に陥りがちになりますが、野菜を使ったメニューが多いのも旅行者には嬉しいポイントです。

肉・魚介・野菜など、新鮮な地元産の素材がふんだんに使われたArcemillaの一品料理

肉・魚介・野菜など、新鮮な地元産の素材がふんだんに使われたArcemillaの一品料理

 

 同じく地中海料理をベースに、ギリシャ・スペイン・イタリア・モロッコの要素をふんだんに取り入れたシェアプレートが中心のOx and Finch(オックス・アンド・フィンチ)も、週末には予約が取りにくくなる人気店です。インダストリアルでモダンなインテリアも注目の的。メニューの種類が豊富なので、毎日通っても飽きないところも人気の秘密です。

シェアプレートが中心のOx and Finch

色々な味が楽しめるヘルシーなワンプレートディッシュはシェアにぴったり
 

木や革、鉄などの異なる素材を組み合わせたモダンでクリーンな内装

 英国の首都ロンドンでは、すっかり主流となったシェアプレートや中近東系のフュ―ジョン料理ですが、グラスゴーの嬉しいところは、ロンドンよりずっと安く、新鮮な素材を使った食事が楽しめるところです。Five Marchも、中東や日本、韓国の食材を取り入れた繊細な味わいの料理が自慢の人気店。ワインとのペアリングにも定評があります。
 

 最先端のスタイリッシュな料理も良いけれど、やっぱりスコットランドの伝統料理が食べたい!という時のために、行きつけのモダンスコティッシュレストランもピックアップしておきましょう。ウェストエンド地区で長い間人気を誇っている老舗のUbiquitous Chips(ユビキタス・チップス)です。バーやパブ、レストランが建ち並ぶアシュトン・レーン(Ashton Lane)にあり、緑に囲まれた吹き抜けの気持ちの良い空間で、モダンにアレンジされたハギスやジビエなどの絶品スコットランド料理が味わえます。ウェブサイトからの予約をおすすめします。

老舗のUbiquitous Chips

お洒落な飲食店が建ち並ぶ、人気のアシュトン・レーンにある老舗
 

老舗のUbiquitous Chips

緑を配した中庭のコンサバトリーは瀟洒で心癒やされる雰囲気
 

老舗のUbiquitous Chips

料理のプレゼンテーションがお洒落なのもUbiquitous Chipsの人気の秘密
 

 シティ・センターなら、こちらも老舗の人気店、Two Fat Ladies in the City Centre(トゥ-・ファット・レディース・インザ・シティセンター)。魚介のクリームスープであるカレン・スキンクやサーモンなど、スコットランドならではのシーフードメニューが充実しています。お得なランチもおすすめ。ちなみに、フィニエストンにもファインダイニングのTwo Fat Ladies at the Butteryがあり、こちらはより重厚な雰囲気の中、伝統的なスコティッシュ料理が満喫できます。

Two Fat Ladies in the City Centre

シーフードの前菜とメインコースがリーズナブルに楽しめるランチセットがお得

 シティ・センターでランチをしたら、少し足を延ばしてマーチャント・シティを散策するのもおすすめ。モダンアートの殿堂、GoMAことギャラリー・オブ・モダン・アート(Gallery of Modern Art)で最新アートをチェックしたら、スニーカー・ランドリー(Sneaker Laundry)へ。カフェが併設されたスニーカー修理・洗浄の専門店で、どんなリペアの相談にも対応してくれます。もちろん、レアなスニーカーやTシャツなども扱っているので、お買い物スポットとしても最適です。スニーカーのケアに特化した、珍しくてスタイリッシュなお店なので要チェックです。

 

ウェリントン卿の乗馬像

GoMAの正面に聳える、長靴を発明したことで有名なウェリントン卿の乗馬像。1980年代前半から、この像にカラーコーンを被せることが伝統となってしまい、自治体との攻防が続いています

 

スタイリッシュなSneaker Laundryの内観

スタイリッシュなSneaker Laundryの内観。サードウェーブ系として人気の高いAllpress Espressoのコーヒーも楽しめます

 

 最後に、もうひとつマッキントッシュ関連とフットボール関連の穴場スポットをご紹介しておきましょう。クイーンズ・クロス教会(Queen’s Cross Church)、通称マッキントッシュ教会は、レニー・マッキントッシュが日本建築にインスピレーションを受けて設計した、木造の教会です。不定期でコンサートやアートエキシビションなども開催しています。静謐な空間で、建築デザインの粋を堪能できる特別な場所。市内のやや北東部に位置していますが、足を延ばす価値は十分にあります。

 またこの教会のすぐそばには、サッカースコティッシュリーグ1部のパーティック・シスルFC(Partick Thistle FC)の本拠地である、ファーヒル・スタジアム(Firhill Stadium)があります。こぢんまりとした昔ながらの面影の残るスタジアムで、地元のサポーターと観戦する試合は、またプレミアリーグとは違ったフットボールの楽しさを教えてくれます。

 

マッキントッシュ教会

レンガ造りの外観と、木造の内観のコントラストが美しいマッキントッシュ教会
 

マッキントッシュ教会

この時はちょうど地元のアーティストの展覧会が行われていました(現在は終了)

地元フットボールチームのレトロなスタジアム

どこか郷愁を誘う、地元フットボールチームのレトロなスタジアム

地元フットボールチームのレトロなスタジアム

グラスゴーには、ここでは紹介しきれなかったさまざまな角度の楽しみ方が、もっともっとあります。テーマを決めて、何度も訪れたくなる魅力に溢れた街です。

Author

長谷川友美/YUMI HASEGAWA

ライター/コーディネーター。ロンドン在住。 カルチャー、ライフスタイル、ファッション、音楽、食、旅、アートなど、 イギリスの最旬情報を幅広く執筆・翻訳・通訳する英国オタク。

| View all author blogs

Latest Blogs

スコットランドが誇るモルトウィスキーの島・アイラ島完全攻略法

モルトウィスキーの島・アイラ島完全攻略法
スコットランドが誇るモルトウィスキーの島・アイラ島完全攻略法

環境先進国でサステナブル・ロンドンを楽しみ尽くす!

Dalston Eastern Curve Garden
環境先進国でサステナブル・ロンドンを楽しみ尽くす!

魅惑のレストランをハシゴしよう!旬のロンドン・ラッキー7

あぶそる〜とロンドン
魅惑のレストランをハシゴしよう!旬のロンドン・ラッキー7

馬と過ごすコッツウォルズの優しい休日

馬と過ごすコッツウォルズの優しい休日
馬と過ごすコッツウォルズの優しい休日

フォートナム・アンド・メイソン Q&A。いつもそこにある優雅なコーナーショップ

Fortnum & Mason フォートナム&メイソン
フォートナム・アンド・メイソン Q&A。いつもそこにある優雅なコーナーショップ

Register for our newsletter